コックピットを作ろう

トイレという空間には排泄以上の価値があり、極端に走り過ぎない平凡かつスマートな狭さがその価値をぐんと高めてくれる。利休が現代に生まれていたらこう言うだろうし、なんならわざと腹を下してトイレに引きこもるのを良しとする糞道なるものを創設しているだろう。俺の人生計画ではいずれ月面に大農場を拓き豪邸を建てることになっているんだけれども、トイレだけは小さく設計する予定でいる。

 

実家がマンションで、自分の部屋はもともと物置きとして使っていた部屋だったので、布団を敷くスペースと机でちょうどぴったりになってしまう狭さだった。しかも自室を出るとすぐリビング兼キッチン兼両親の寝室だったため物音に気を遣わなければならず、なんとなく部屋の戸が半分開いているような心持ちで生活していた。まあ部屋があるだけ全然マシなんだけどね。

そんな中でそれなりに広くて完全にパーソナルな空間を持ちたいと常日頃から思っていたのだが、一人暮らしをしていてもなぜだかこの願望が消えない。結局家の中でそれが満たされるのはトイレだけである。つまり願望を書き直せば、十分なパーソナルスペースを持った上で、更に人一人できっかり埋め尽くされるような空間が欲しい訳なのであった。

これに一番近いと思われるのはロボットとか戦闘機のコックピットだが、一人に一台支給されるほど世界は進んでもないし混沌としてもいない。実現可能なセンで言えば自動車が近いが、普通は運転席以外にも座席が一つ以上はあるからなんか違う。自分以外の人間が入り込むことを前提に作られているというだけで興が削がれる。トラクターやクレーンは?確かにぴったりだけど、気軽に手元に置いておけるものでもない。ところで「部屋 コックピット」で検索したらKAKUREYAとかいうイカした商品が出てきたんだけど、流石に80万は強気過ぎやしませんかね。

現実的なところに戻ると、要するに部屋の中に小さな部屋を作り出せば願望は満たされる。残念ながらトイレはトイレとして使っている以上トイレ特有のトイレってる感じがあるので、それ以外にもう一つ1畳分くらいの空間が欲しい。例えば7畳の部屋によくある出っ張ったスペースを仕切り、小さな椅子を置けば完成するだろう。では今住んでいる6畳の部屋の中にそれをどうやって作り出そうか。幸いなことに22世紀産のタヌキが寝床にできるくらいには広い押入れがあるので、今からうまいことやってみようかなと思う。

 

そんなようなことを口実にして汚い部屋を片付けていこうと思います。その都度口実を作っていけばいずれ習慣になると信じよう。