春ですね

特に書きたいこともないが何となく更新してみようと思う。なぜ特に書きたいことがないかというと、特に書きたいことがないからです。

 

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これはナマズの友人から聞いた話だが、なんでもナマズの若者の間では最近「左鰓だけオシャレをする」というナマズ界の由緒正しき風習が廃れてきており、逆に右鰓だけオシャレをするのが流行っているらしい。

人間の俺からしてみれば鰓にオシャレも阿闍梨もあるかいな、なんて思うのだけれど、思い返してみればナマズの鰓をまじまじと見たことがないので、もしかするとそれなりに何かしらのことはやっているのかもしれない。ナマズからしてみれば、スニーカーのブランドがナイキかアディダスかなんてのはあまり気にならないのだろうし。

その友人はわりかし保守的かつ極端なナマズなので「これは魚界全体を揺るがす大問題だ!」なんて言っている。1年前に会ったときはまだナマズ界に限った話だった。おそらく来年には生物界全体の話になっているだろう。まだ当事者ではないからウンヘーウンヘーソーナンダなどと適当に相槌を打っているが、そろそろこの問題に当事者意識を持って向き合わなければならない。しかしどれだけ考えてみてもどうでもいいという答えしか出てこない。春の陽気のせいだろう。

 

そんなことより第一に向き合うべき問題は、俺がナマズと友人だと思っている妄想それ自体なのだと思う。俺は俺の手の届く範囲でしか人間を知らないけれども、多分人間は魚と喋ることができない。なぜなら人間は人間の言葉を扱うことしかできないし、魚は魚の言葉でしか喋れないからだ。

しかし、そんなことももうどうでもいいのだ。これも春の陽気のせいなのだろう。

 

遠くでビルの崩れ落ちる音がした。尻ポケットからオペラグラスを取り出して見てみると、瓦礫が海へと落ちていくのが見える。そして赤いランプだけは光りながら海の向こうへ飛んでいく。あの赤いランプは航空障害灯と言うらしい。あのまま飛んでいくと、ちょうどセーフコ・フィールドの左バッターボックスに落ちるだろう。

イチローはアレの正式名称が航空障害灯だということを知っているだろうか。あちら側に届くまでに電話して教えてあげたいが、もう引退してしまったからどうでもいい。これもまた春の陽気のせいだと思う。

 

俺は春だから少し浮かれている。桜が綺麗だ。ナマズの友人もイチローも、多分春だから少し浮かれていることだろう。