スッポンパンツのおじいちゃん

スッポンパンツ、というものを知っているだろうか。正面の丈はブリーフ程、後ろはトランクスよりも長いという前後非対称の独特な形状で、薄茶色をした綿素材のパンツのことである。なぜスッポンというネーミングなのか正気を疑うが、確かにスッポンっぽいっちゃあスッポンっぽかったので許した。いや、やっぱりスッポンぽさってよく分からないので許しません。

昭和の中頃に急激に流行り急激に廃れたらしく、店頭で見かけたことがないので恐らくもう入手は不可能か、そうでなくともめちゃくちゃ厳しいと思われる。平成に入った頃にはもう既に、ああそんなものもあったな、なんだったんだろうなアレ、という感じで忘れ去られていたようだ。

 

中学の頃に亡くなった父方の祖父はそんなスッポンパンツをなぜか大量に持っていた。よっぽど履き心地が気に入ったのだろうか、詳しい理由はもう分からないが流行った頃に100枚近く買い込んだらしい。

パンツを100枚買うなんて金の使い方としてはどう考えてもクソアホなのだが、急激に廃れてしまったことを考えるとなかなか稀に見るファインプレーである。気に入ったパンツを死ぬまで穿き続けられるのは多分とても幸せなことだし、金玉袋も生涯添い遂げるパートナーがいてさぞ心強かっただろう。

 

そういえば一緒に風呂に入ると、風呂上がりに必ず「大人になったら穿かせてあげるよ、まだまだ一杯あるから」と言っていたような……。当時はダサいとしか思えずに絶対いらないなんて突っぱねてたけど、そんなレアモノなら一枚くらい貰っておけば良かったなあ。長らく父方の実家には行っていないが、まだ残っているのだろうか。その確認のためだけに、久しぶりに顔を出してみたい気もする。

 

 

 

 

 

 

あ、全部ウソです。スッポンパンツなんてないし父方の祖父は生まれる前か幼少期(どっちかは忘れた)に亡くなったので記憶にないし、パンツを100枚買うのは普通にクソアホ。